畳とは、畳表、畳縁、畳床からなる日本固有の敷物で、日本建築文化の変遷とともにその形式をかえてきた。
平安時代は板敷きの部屋に厚畳を寝台として用いたり、高貴な人が座る敷物などとして部分的に用いられた。
部屋全体に畳を敷き込むようになったのは鎌倉~室町時代の書院造りが完成されてから、庶民が畳の生活を始めるのは江戸時代である。
現在市場に流通する畳の種類は、大別して4種類の畳表(国産天然藺草、海外産天然藺草、和紙、PP)と3種類の畳床(藁床、藁サンド床、建材床)の組み合わせからなる。
伝統的な畳表は天然の藺草を緯(よこいと)として織り上げたもので、藺草の種類は良く知られた一般的ま畳に用いられる丸藺と、かつて柔道畳に用いられ、近年人気の高い琉球畳用の三角藺がある。丸藺は国産品以外に中国などの海外品が約8割流通している。
また、和紙を加工した和紙表、ポリプロピレン製のPP表、などがある。
丸藺による殆どの畳表は藺草の刈り取り後、泥を撹拌した液に浸し乾燥する泥染を行ったものを整織する。
これは、従来草の青さが珍重されるため、青畳の状態をより長く保つために講じられた工程だが、泥染を行なわず自然な干し草色をした無染土の畳表もある。無染土の場合、藺草の良し悪しがダイレクトにでること、織りや藺草の乾燥工程が難しいことなど、藺草生産者を始めとする全ての工程に高度な技術が要求される。
また、染土の畳表には海外品など着色剤を使用している場合があるので、畳表の表面を白い布や紙で拭いて泥の色以外の不自然な青さが付着するものには注意したい。熊本県では天草の天然指定染土で統一しているため、色も揃い品位が高い。
畳表の経素材には、高級畳表用の麻、普及品用の綿、畳産用の化学繊維があり、かける糸の素材や本数によって藺草の打ち込み数が変わる。
色目がよく、斑や傷がなく、茎の径が揃った藺草を蜜に打ち込み、目がまっすぎに通った畳表ほど上質である。
伝統的な畳床は天然の稲藁を交互に重ね圧縮した状態で縫い上げ、最低4段、高級品では6段以上を使用する。
畳床の出来栄えは畳本来の仕上がりの基礎となり、職人の技量が問われるところである。
現在は藁床の芯をポリスチレンフォームにかえたサンド床と、藁を全く使わずにタタミボードやポリスチレンフォームなどで構成された建材床があり、各種機能性を付加したものや薄畳用など多種多様の畳床がある。
平安時代の有職故実書「海人藻芥(あまのもくづ)」には身分、位階による畳縁使用規定が定められていた。
最高位の天皇や法皇、神前、仏前の半畳用には繧繝縁、親王や大臣は大紋高麗縁、公卿は小紋高麗縁、僧侶や学者及び四位、五位の身分では紫縁、侍、及び六位の身分には黄縁が定められた。現在は神社仏閣、茶室以外では特に決まりはないが、畳や部屋の格にあったものを選びたい。
素材は錦、麻、綿、絹、化学繊維などで、織柄の有るものと無地でその種類は数千種にのぼる。
畳のサイズは関東と関西で異なり、その中間サイズが名古屋地区で用いられる。
名称 | サイズ 寸cm 表示 | 地域 |
---|---|---|
京間(本間間) | 6尺3寸×3尺1寸5分
191cm×95.5cm |
京都を中心とした関西地方 |
中京間(三六間) | 6尺×3尺
182cm×91cm |
名古屋を中心とした中京地方 |
江戸間(五八間) | 5尺8寸×2尺9寸
176cm×88cm |
東京を中心とした関東地方 |
団地間(五八間) | 5尺6寸×2尺8寸
170cm×85cm |
団地など |
1寸=3.03cm 1尺=30.3cm 1寸×10=1尺
上質な国産畳表は色目や茎の径が揃って、斑や傷がない藺草を蜜に織り込むため、配(畳の目の山)がくっきりと美しく経年変化とともに、美しい飴色に変化する。下位のものは織り込み本数も少なく、時間が経つとともに黒い筋などがめだつようになる。
国産天然藺草畳表、和紙畳表、PP畳表のそれぞれの防炎性能について、消防法施工規則第4条の3の基準に則し、エアーミックスバナー法にて検証を実施した。試験は(財)日本防炎協会大阪試験所で行われた。
国産天然藺草表と和紙畳表は適合、PP畳表は不適合となった。
但し、和紙畳表、PP畳表には複数の種類があるため、全ての種類の検証値ではない。
古来伝承されてきた日本建築では、自然素材(畳、木材、和紙、土など)を用いた伝統工法で高温多湿の自然環境に対応した換気の良い住宅環境を整えていたが、現代の建築工法ではコンクリートやサッシなどによって気密性が高まり、温度や湿度、換気などの意識的な調整が必要となっている。
関係省庁では建築衛生法、労働安全衛生法、建築基準法にて、室内の温度、相対湿度を定めており、室内温度は17℃~28℃、湿度40~70%の基準値を定め、理想値としている。
国産天然藺草を織り上げた藺草畳表と、和紙に表面加工を施した和紙畳表、そして、ポリプロピレンを加工してつくるPP畳表の調湿性について熊本県産業試験センターにて比較試験などを行ったところ、国産天然藺畳表の調湿性能が最も優れ、21~5%の範囲で、吸・除湿を繰り返す機能を確証した。但し、和紙畳表、PP畳表の全ての種類の試験値ではない。
恒温高湿器を用いて、吸湿・除湿の繰り返し試験を行った。国産天然藺畳表の調湿性能が最もすぐれ、PP畳表では国産天然藺畳表の四分の一以下、和紙畳表の調湿性能は認められなかった。極めて優れた調湿性能を発揮した国産天然藺畳表は、原料となる健康な天然藺草の構造(表面が猟質で覆われ茎の内部は充実した海綿状)によるものと憶測される。
湿度90%、30℃、24H/湿度45%、18℃、24H
2種類の環境を交互に繰り返し、吸湿除湿の状態を国産天然藺表、PP表、和紙表の3種類で比較測定。
国産天然藺草畳表のデシケータ内・室内放置により吸湿・除霊の繰り返し性能測定を行った。
結果、40g/m
2の保湿量にて、理想的な湿度を維持し、吸湿・除霊の優れた機能が繰り返し発揮された。
40g/m
2の保湿量は天然藺の茎の内部、海綿質が保水するためと考えられ、国産天然藺畳表は理想的な室内湿度を確保する機能があると言える。
吸湿:湿度80%以上
除湿:実験室内放置(湿度45~10%)
強制的な多湿環境と放置による繰り返し試験にて、国産天然藺畳表の吸湿、除湿性能を測定。
畳の部屋に寛ぎ感を覚える人も多いが、その要因として目に優しい畳の色や、五体を投げ出すことのできる自由度のほかに、畳表に織り上げた藺草の香り成分があげられる。泥染めを施した染土藺草と泥染めを行わない生藺草の方向成分を分析するとその構成に若干の違いがあるものの、双方ともにリラックス効果の期待できる機能性芳香成分が全体の約半分を満たしている。
芳香成分が残る純国産の畳の部屋では、森林浴効果としての癒し効果があると言える。
新畳の部屋で感じる独特の香りは、畳表として織りあげた藺草の芳香成分によるものである。
畳表製織前の泥染めをしない生藺草の芳香成分を調べると、フィトンチッド20.9%、ジヒドロアクチニジオリド23.5%、αシペロン10.2%、バニリン1.2%といったリラックス効果のある機能性成分の結果が得られた。
一般的な畳表に織り上げる泥染め後の藺草では、フィトンチッド20.1%、ジヒドロアクチニジオリド10.2%、αシペロン6.0%、バニリン6.0%で、これらリラックス有効成分を合計すると生藺草55.8%、泥染め後の藺草42.3%と高い比率を示した。
住宅の高気密、高断熱化が進み、有害な化学物質を含んだ建築材料や家具類を用いることで、室内の空気は汚染され、健康に悪影響を及ぼしている。頭痛やめまい、吐き気などの健康被害が生じるシックハウス症候群は原因物質としてホルムアルデヒドや爆発性有機化合物(VOC)があげられ、関係省庁がその測定法や新製品の開発、工場設備の改善にとりくみ、建築基準法では内装仕上げ材、換気設備、天井裏制限などによって規制をかけている。また、建築基準法で規制のかからない家具類には(社)全国家具工業会が独自の基準を設けている。
有害物質吸着性能の有無を調べるため、国産天然藺草畳表、和紙畳表、PP畳表におけるホルムアルデヒド、二酸化窒素、アンモニア、酢酸ガスなどの吸着試験を行った。但し、和紙畳表、PP畳表には複数の種類があり、全ての種類を検証したものではない。
実験素材となる国産天然藺草畳表、和紙畳表、PP畳表を実験装置用の箱に設定後、箱内を真空としたのち該当有害ガスを充填、ガス循環ポンプを作動させ、箱内の濃度を一定にし、所定時間毎にガス濃度測定を行った。
国産天然藺草畳表は3点中最も高い性能でホルムアルデヒドを吸着し、和紙畳では殆ど吸着する事はなかった。
二酸化窒素は燃料の燃焼によって発生し、呼吸器疾患やアレルギー発生の要因となる。開放型暖房器具(石油ストーブ、ガスストーブ、ファンヒーター)使用の際には、十分な換気に注意しなければならない。試験は、上記ホルムアルデヒドと同じ方法にて測定を行い、国産天然藺草畳表は3点中最も高い性能で二酸化炭素を吸着し、和紙畳表の機能はもっとも低かった。
アンモニアとは自然界では、水産加工品の残さい等が微生物によって分解され発生し、また屎尿系の排泄物や、コンクリート構造体からも発生する。常温常圧では無職の期待で特有の刺激臭がある。国産天然蘭畳表を試験体として、4種類の濃度の異なるアンモニアガス吸着試験を行ったところ、濃度に作用される事無く、約1時間で約90%のアンモニアガスが吸着され、空気中のアンモニアガス成分は除去された。
酢酸ガスはシックハウス症候群の原因物質のひとつで、木質系材料や接着剤から拡散される。
国産天然蘭畳表の酢酸ガス吸着性能を試験したところ、約1時間で70~80%が吸着、除去された。
二酸化窒素、ホルムアルデヒド、アンモニア及び酢酸ガスの吸着性能は良好で、室内環境基準維持に有用性があるといえる。
畳表の素材となる「藺草」は、日本最古の医書「医心方」に薬草としての記載があり、江戸時代に編纂された「和漢三才図会」や「本草網目啓蒙」においても藺草の薬草としての歴史を紐解くことが出来る。和漢三才図会によると藺草をすりおろし煎じて飲むことで感染による炎症を抑え水腫改善に効果があるとの記述がある。北九州市立大学准教授、森田洋農学博士は藺草のさまざまな有害微生物に対しての抗菌作用を1999年に解明した。
足の臭いの原因は大きく分けて2つあるといわれている。ひとつは汗腺・皮脂腺から発するアンモニア、もうひとつは足に付着している微生物群の増殖で発生する腐敗臭がある。
藺草はこの微生物群の増殖を抑える作用にも優れた効果を発揮する。
古来使われてきた草履や下駄から足の蒸れやすい靴を履く文化が主となり、畳の暮らしからフローリングやカーペットに変わり、ペットを室内で飼うなど、生活形態の変化により、高温多湿の日本にあっては白癬症感染者数が増加傾向にある。
現代の住環境として主流のフローリングやカーペットには抗菌性能がないため家庭内感染も多く、よりその傾向を助長していると言える。調湿機能を備え、かつ抗菌機能をもつ畳の生活を見直したい。
厚生労働省の平成21年度「不慮の事故死亡統計の概況によると、家庭内における事故での死亡者数は、増加傾向にある。
2008年の家庭内事故での死因は「溺死」「窒息」「転倒・転落」の順に多く、これらで全体の8割を占め、年齢別では65歳以上の高齢者だけで1万人を超えている。また、平成20年の国民生活センター発表によると、家庭内事故発生場所の上位3ヶ所は「居室25.8%」「階段13.1%」「台所11.9%」である。
室内転倒時の重大事故を防ぐためには、衝撃吸収性能の高い床材を用いる事も有効だ。数種類の床材で比較検討を行い、畳の衝撃吸収優位性を確証した。
落下等による脳への損傷程度を表す数値がHICで、ヘルメット、自動車のフロント硝子など、頭部に関する安全基準値として世界各国で使われており、HICが1,000の数値を超えなければ頭部衝撃損傷は生命を脅かさないと考えられる。0.1m~1.4mの高さ迄人体東部モデルを試験体に落下させHICを測定した。
※蘭草表+インシュレーション床の畳が最もHIC値が低く、木製フローリングの2分の2の数値を確認した。
ボールを落下させたときの跳ね返りの高さから衝撃吸収性と反発弾性を求めようとする試験が、GB・SB試験である。
GB反発試験では、直径1インチのゴルフボールを1mの高さから落下させた時の衝撃吸収測定、SB反発試験では直径1インチのスティールボールを1mの高さから落下させた時の男性反発測定を行った。
※蘭草表+藁床の畳が衝撃吸収性、反発弾性共に最も優れ、木製フローリングの倍以上の性能数値を確認した。
マンションに限らず、一戸建ての住宅においても階上の床衝撃音は種類の構造によって騒音問題に発展する場合がある。
床の衝撃音としてはスプーンのような硬くて軽いものを落としたときの器量衝撃音(LL)と、人が歩いたり、ドンドンと飛び跳ねた時の重量衝撃音(LH)の2種類がある。住宅品質法性能表示制度に基づき等級を定めており、LL、LHともに数値が小さいほど床衝撃音の吸収性はよい。
国産天然藺の畳表による藁床畳、藁サンド床畳、建材床、置き畳の床衝撃音吸収性能を、日本建築総合試験所の協力をえてΔL(デルタエル)等級で検証した。
ΔL等級とは、床仕上げ構造単体の遮音性能を表す基準である。下記表内のΔLL(Ⅱ)-2などの表記は、最後の数字が等級数を表しており、等級数字が高いほど、床衝撃音レベルが低減性能が高いことを示す。
藁床、藁サンド床の55mm厚の畳では軽量衝撃音、重量衝撃音ともに吸収性は概ね良好であった。
試験体表面
:18℃ 厚200mmのコンクリート標準床をもちいた試験結果である。
国産天然藺の純国産畳を敷き詰めた畳教室と、木製フローリングの一般教室で、簡単な算数の問題を解いてもらい、その正解率、回答率を検証したところ、正解率は1.9%、回答数は14.4%の増加がみられ、畳教室の集中力持続効果が認められた。畳の材料である藺草の芳香成分にはリラックス効果や森林浴効果をもたらすバニリン、フィトンチッドなどを含み、また靴を脱ぐことによる解放感などが集中力の増加につながった要因と考えられる。
畳教室と一般教室において、九州地区の中学1年生233名(男子131名/女子102名)小学5年生90名(男子65名/女子25名)、総数323名を対象に、簡単な算数の問題全234問をそれぞれ30分ずつ解かせ、その結果を検証した。
回答数 | 正解率 | |
---|---|---|
畳教室 | 145.7問 | 90.40% |
一般教室 | 129.0問 | 88.50% |
伸び率(一般教室の結果を100として) | 114.40% | 102.70% |
小学生:124.3% 中学生:112.4%
国産天然藺草を材料としてつくられる良質な純国産畳の寿命は、手入れや使用方法、使用環境にもよるが、10~30年といわれる。
畳床の表面にはられる畳表は、裏返し、表替え等が可能で目安は一般に3~5年。
畳床は表面の凹凸が目立つようになったり、ふかふかした感じになったときが衣替え時とされるが、15~30年が目安となる。
畳表の表面が擦り切れたり、汚れが適切な対処法で処理しても落ちなくなったり、日焼けが目立つようになったときには畳表を裏返して使用することができる。通常新畳を入れてから3~5年が目安となり、加工は畳店に依頼できる。
畳表の裏返し後、再びダメージが目立つようになったときには、畳床はそのまま活かし、畳表のみを新しいものに交換することができる。
裏返し後3~5年が目安となり、裏返しと同じく畳店が加工を行ってくれる。
畳床にどめーじがでた時には、畳を丸ごと交換する畳替えを行う。
正常な環境で正しい手入れが行われた場合には、およそ10~30年の耐用年数がある。
マンションなど気密性の高い部屋で換気が十分ではなかった場合、過度な湿度によって畳の耐用年数は短縮される。
畳床の傷みがひどい場合、そのまま放置すると、建物の構造体にまでダメージを与える場合がある。
日常の手入れは、目にそった掃除機掛けと乾拭きが基本。濡れ雑巾で何度も畳を拭くと、藺草表面の保護膜が剥がれてしまい、畳を劣化させたり。毛羽立たせてしまう。汚れがひどい場合には固く絞った雑巾掛けの後、乾拭きをして、湿気が残らないようにするのが大切だ。
また、綿埃などが気になる場合には、昔ながらの方法として、水分を固く絞った緑茶の茶殻を畳にまき、埃をまとわせた茶殻を手早く箒で集めて処分する掃除方法もある。但し、茶殻の水分が十分に絞れていなかったり、茶殻をまいた後素早く作業が終了しなかった場合、畳表や畳縁にシミをつけてしまう場合があるので注意したい。
ダニは世界で6万種、日本では1,700種が記録されており、家屋内では100~150種が検出されている。このうち特に問題になるのは家屋内に生息する3種類、屋外から侵入する2種類、人に寄生する1種類のダニと言われている。家屋内に生息するダニの70%を占めるヤケヒョウヒダニ、コナヒョウヒダニ(チリダニ科)は生虫、死虫、糞いずれもアレルギー原因物質の一要素であり、アレルギー性喘息、鼻炎、結膜炎、アトピー性皮膚炎などの疾患を患う可能性がある。特にこのダニ類に分は虫体より量が多く、形態は小さく気管に入り易く、アレルゲン活性が高いことから最も注意を要する種類である。
また、ミナミツメダニは人を刺し体液を水、鼠に寄生し屋外から侵入するイエダニは人の血を吸う。
対策としては、餌となる塵を減らすためのこまめな掃除と、繁殖条件をおさえるための温度、湿度の調整などが大切である。
チリダニ科のヤケヒョウヒダニ、コナヒョウヒダニやミナミツメダニの繁殖条件は20~30℃(特に25℃~28℃)、相対湿度51%以上である。また、家屋内のダニは暗いところに産卵するため、敷物や寝具、ぬいぐるみなどを好む。そのため室内の換気を良くし、敷物や寝具、ぬいぐるみなどは風や日光にあてる(日焼に注意)などして50%以下の湿度を保つよう心がけたい。南北の間仕切りを減らし、換気を良くしたり、冬季は室内毎の温度差を少なくして結露を防ぐなどの手段も有効である。
また、高湿度の床下の影響を受けないように床材との間には断熱材を入れ、床には極ものを置かないようにすることが望ましい。
畳は裏面の日光干しなどで湿気対策やダニ対策が行えるが、1枚毎の微調整を入れている場合が多いため、はずす際には、目立たない裏面などに印をいれておきたい。畳を少しあげ、室内の換気を良くするだけでも効果はある。
気密性の高いマンションや、北向きの部屋では注意したい。
国産天然藺草による畳は日本固有の敷物文化、工芸産業として発展してきたが、生活様式の変化、海外生産品、新素材畳などの影響によって需要は減少傾向にあり、原料となる藺草の国産栽培地は全盛期の十分の一となっている。
現在熊本県が全体の95%の国産藺草生産量を確保し、次いで、福岡県、広島県、沖縄県、高知県、石川県、大分県の順で、国産品ならではの産地毎の個性ある優れた品種を栽培、それぞれの目的に応じた上質な畳が各地で作られている。
全国一の藺草生産地。肥後表としてとして親しまれ、藺草栽培は永正年間(1503頃)からの歴史がある。
熊本ブランド優良藺草品種「ひのみどり」は茎の直径が1.1mmと極細の品種(従来の85%の径)
茎は揃い内部は充実し、表面の良質状態もよく長茎収量も良好である。そのため、従来品畳表が1帖あたり5,000本の藺草使用量に対し、7,000本の打ち込みが可能となり、目が積み、配がくっきりと、面の美しい畳表が製織される。経年変化により畳表の色変化も美しく、また径には丈夫な糸を使用するので耐久性にも優れる。最高位の熊本ブランド畳表として「ひのさらさ」ついで「ひのさくら」、上級畳表「ひのさやか」などがある。
熊本県では国産並びに生産履歴の証明のために「QRコード付タグ」を挿入している。
2010年に復元された熊本城本丸御殿、昭君之間には「ひのさらさ」が敷き詰められ、畳本来の良さを存分に伝えている。
ブランド畳表の他、標準品などもあり。品揃えは豊富。
熊本県に次ぐ藺草生産地。福岡表は筑後表と呼ばれ、文禄年間(1592頃)に藺草栽培が始まった。
高級花莚、掛川織の歴史もあり、色藺を用いた文様織りや変わり織りの伝統技術をもつ。 福岡ブランド藺草品種「筑後みどり」を用いた高級ブランド畳表「博多華織」「博多咲織」のほか、従来の普及品では大口需要にも対応している。
備後表は天明年間(1532頃)に野生の藺草を栽培し、畳表に製織したのが始まりと言われる。
桂離宮にも使われた高級畳表の生産県だが、現在では藺草の生産量は少なく、本口畳表と他県産物がある。
短藺の地草でつくる中継ぎ表は寺院や茶室などで使用されるが、織り手は殆どいなくなっており、稀少である。
沖縄方言で藺草をビーグと呼び、約150年前、勝連間切(かつれんまじり)地域で栽培されたのが始まりと言われる。
現在の沖縄のビーグは40年以上前に福岡の太藺を根付けしたものが、自然環境の中でさらに太くしっかりとした藺草へ進化し、独自の丈夫なビーグ表を製織するようになった。泥染めは行なわず、より自然な風合いの畳表となる。
土佐表と呼ばれる畳表は、草丈が長く、粘りのある良質な藺草で製織される。
冬期の厳寒の環境が丈夫な藺草をつくり、製織された「小松表」は、耐久性に優れる。
琉球畳はトカラ列島が発祥の地と言われるが、現在国産品は大分県国東半島でのみ生産されている。
原料の七島藺は一般の畳に使用する丸藺とは異なり、茎の計上が三角になっている事から三角藺とも呼ばれる。
丈夫な琉球畳はかつて柔道畳としても親しまれ、現在では縁無の半帖畳として人気がある。
丸藺の目積等による縁無半帖畳とは異なるものである。